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本書は「放送禁止歌」の実態を探りながら、音楽業界だけの話にとどまらず、その背景にある部落差別の根深い問題に焦点を当てている。非常に奥の深い内容である。私はかつてこの本の紹介記事を書くために、著者には会わなかったが、監修者であるデーブ・スペクターに電話インタビューした。 世の中には「放送禁止」の歌がある。理由は差別用語を含む、というのが多いようだ。 実際には放送「禁止」ではなく、「自粛」であるのが実態。背景には、開放同盟による部落解放運動の際の苦い経験があり、マスコミが“触らぬ神に祟りなし”状態になっているということのようだ。 差別の表現をなくすことは、差別をなくすことではない。差別の言葉を封じたところで、差別の精神がなくなるわけではない。 まして、部落差別の悲劇を訴える歌を、部落問題に触れるという理由だけで抹殺してしまう放送業界・レコード業界の偽善、いや偽善以下の現実逃避に、日本社会の根本的問題を見るような気がする。 解放出版社 \1800
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